日本学術会議の会員任命拒否問題について、学術会議に10億円の予算が措置されており、学術会員が特別職の公務員であることから、総理が任命権を持つのが当然ではないかという意見があります。

政府の機関だから、という理屈は短絡的に過ぎます。なぜなら、政府として専門家と意見交換しながら科学技術をはじめ学術に関して提言をする組織としては、別途「総合科学技術・イノベーション会議」があるからです。

この組織は、総理をヘッドとして、まさに学術界の知見を受け止めながら科学技術・イノベーション戦略を検討する組織です。ここの人事に総理の裁量が及ぶの当然です。

一方、日本学術会議は役割が異なります。政府の機関ではありつつも、独立的な立場から、政府に対して提言を行う、これがそもそもの日本学術会議の役割です。

ですから、予算が投下されているとしても、会員が特別職の公務員であったとしても、そもそも独立した立場から活動するということで作られた機関であるのです。

今回の菅総理の任命拒否は、人事を通じて、独立的な機関をあえて総理に従属させようとしているということ。すなわち学問の自由に対して、かなり抑圧的な姿勢を示しているわけです。

そこが大きな問題だということは、指摘をしておかなければなりません。